音更町の集合住宅の谷間にぽっかりと浮かぶ緑のオアシスのようにも見える建物は、造園家、柏倉一統さんが昨年5月に新築した自宅兼事務所です。奥さんの夢だった平屋の建物は、札幌の建築家、蓮池真也さんが設計しました。
　「僕が提案しているのは、草木の風の香り、季節の味が暮らしの中で楽しめる美味しい庭。2年前、自宅を構えるにあたって、それをまず自分で実践したいと思いました。ご自身でも庭造りを手掛ける蓮池さんなら、その想いを共有できると確信し、設計を依頼しました」。
　施工は、これまで建築家の住まいを多く手掛けてきた大野建設。カラマツと漆喰で構成されたシンプルな空間は、丁寧な職人仕事の積み重ねでより美しく仕上 がりました。開放的な平屋の建物は目線の抜けがよく、どこにいても庭が間近に感じられます。暖かな時期には、庇が心地よい影をつくる縁側が、庭の特等席 に。
　「設計、施工、それぞれの完成度の高い仕事に触れて、僕自身が学ぶこともたくさんありました。新築から２ヵ月後、造園家として独立の機会に恵まれ、この 素晴らしい建物を事務所にすることを妻が提案してくれました。より十勝の暮らしに根付いた仕事に精進したいと思います」